さよならの見つけ方 第1章

ふっとパイプオルガンの演奏が途切れて、アカペラで静かに始まるマイケルのソロ。






ふわりと耳に流れ込んでくるマイケルの声。






聞き慣れた今でも、毎回感動してしまう。







まるで透明度の高い宝石をゆっくりと覗き込んだ時のような、



それでいて朗らかで優しくて、どこまでもまっすぐ伸びていく陽の光のような。











(綺麗な、声)






相変わらず、この子の声は昔からそうだ。






みんなの心を一瞬で虜にする。










天性の美しい声質に頑張り屋さんの性格が備わって、見事なソリストに成長したのだ――――










長く難しいソロを終えたマイケルの表情に、安堵の色が見える。






その瞳がぱっと私をとらえたので、頬の横で小さく手を振ると、



顔を真っ赤にしてマイケルが微笑んだ。






一人きりの戦いから解放されて家族の待つ家にようやく辿り着いた、小さな戦士のようだ。










いつの間にこんなに、大きくなったのだろう。









“後でいっぱい褒めてあげるからね”






口の動きだけでそう伝えると、通じなかったのだろう、マイケルが歌いながら小首をかしげる。






たまに近所の公園で見かける、小さなリスの仕草に似ている。










9才になっても相変わらず可愛い、



私の大切な、大切な弟。