大嫌いなバレンタイン







見なきゃ良かった。





後悔しながらも、焼き付いてしまうその姿。






雪乃と同じ傘に入っている、スーツ姿の綺麗な女の人。




雪乃と同じようにコートを羽織って、楽しげに笑っている。




こっちに近づいてくるにつれ、少しだけ会話が聞こえてくる。




「はい、コレ」


「……なに?」


「んー、雪乃くんは同僚だから……何チョコっていうのかな?」


「本命じゃないなら、普通に食うけど」


「義理だよ義理。義理のチョコケーキ!」












もうやだ。




……帰りたい。



瞬時にそう思う。