それからまた10分ほど経って、向こうから誰かの歩く音が聞こえる。 どうせまた雪乃じゃないんだろう。 そう思いながらも、淡い期待に心を踊らせてちょこんと覗く。 「……っ」 雪乃だ! 単純だ、と思いながらも喜んでしまう。 スーツ姿にコートを着てビニール傘をさしながら、こちらへ向かって歩いてくる雪乃の姿。 ……だけど。 一人のはずが、隣に向かって笑いかけている彼。 ドクリ、と心臓が嫌な音をたてながらも、その隣を覗こうともう少し身を乗り出す。 「…………」