そんなとき。 鼻につく、慣れないような煙たいニオイが、ふわり、ゆらりとあたしのもとまで流れ込んできた。 これは……タバコだ。 あたしがその紫煙のもとをたどると、1人の男の口元に行きついた。 ボスだ。 流石はヤンキー。タバコはつきものといったところか。 さっきまではあたしのすぐ近くに迫っていた身体が、いつの間にか自分の席に戻っている。 何の気配も感じなかったが。 あたしが黙って梶棗を見やっていると、その視線がふいに絡んだ。 切れ長の目。色気を帯びた流し目に、不覚にも心臓が跳ねる。