何も直接的なニオイは感じないのに、やたらと鼻を図書室のドアに密着させて様子を探る総也。
そんなことしても何もわからないってば。
わざわざ俺が言ってあげるのも億劫だったし、俺はあえて止めることもしなかったけど。
ガラララ、、
「お、開いた!開いてるぜ、稟!入るぞっ」
「えー。俺、早く帰りたい」
開いてしまったドアに手をかけて中へ潜入せんとする総也の楽しげな背中にため息をつく。
「別に総也が言うほど、律明に魅力も感じなかったし」
こんなことなら、せっかくの土曜日をもっと有意義に過ごせばよかったと後悔すらしていた。
「なーに言ってんだよ?運命変えるかもしれないぜ?」
“ここでの出会いが”
どこかで聞いた台詞を引っ張ってきた総也に寡黙を返す。
明かりのついていない図書室からは、少し古びた本のニオイがした。
