「稟!帰ったんだな。一緒に学校見学行こうぜ。今度の土曜」



「総也…。まだ高校決めてなかったの?父さんと母さんは総也のレベルなら北原音大付属も夢じゃないって言ってたじゃん」





玄関センサーに気付いて、家の奥から総也が顔を出した。



翔陽に入学すると同時に髪を金髪にしてピアスの穴をあけ、さらに煙草まで吸うようになった総也は傍から見れば明らかにただのたちの悪いヤンキーだ。




制服はだらだらに乱れているし、部活はサッカー部に入ったみたいだけど、何でも要領よくこなしてしまう総也はこの1年の間に、すでにレギュラー入りして試合のときだけ活躍している。



普段の部活は行ったり行かなかったり。その分先輩とかには目を付けられてもいるみたいだけど、この性格から交友の輪も広いみたいだ。





「はぁ?俺がんなとこ行くわけないじゃん。俺さぁ、律明行きたいんだよなぁ。卒業した先輩が律明に入ったらしいんだけど、結構面白いらしくてさ。俊喜と晴美も大学は任せることを条件に、割とあっさり許可してくれたぜ」



「父さんと母さんが…?」





北原音大付属。それは俺が今通っている聖華音大付属の高等部なんかよりもずっと才能に長けた本格的なプロを育成するような最高レベルの学校。



業界一は貴城第一音大付属の高校だけど、あそこは推薦枠が限られていて、過去の問題数が甚だしい翔陽高校にはその枠が与えられていなかった。