でも、それなら稟は…?


そういえば、稟は翔陽中等部の出身だったのかな。




「おい。さゆ?」


「…え?」


「誰からそんな話聞いた?」




あたしはさっきまで梶先輩と一緒に翔陽高校に行っていたことを総也に告げた。



総也は「なるほどな」ジュースを飲みながら長いまつ毛を伏せる。





「稟も総也と同じように、翔陽の中等部から来たの?」


「稟は…。中学も、音大付属の中学に通わされてた」


「稟だけが?どうして?」




総也はアルバムを何枚かめくって、総也と稟が2人で写っている写真を開く。



そこに目を落としながら、




「あいつは両親の期待に応えようと、必死だったからな。ピアノ漬けの毎日に飽き飽きして、翔陽に行くことを曲げなかった俺と違って。だから俊喜と晴美は翔陽の経営権を金で買ったんだよ」



写真の稟に指をあてて言った。