総也は何も言わずに、ほんの少し口角を上げて笑う。
それが答えだった。
そのまま彼は、脱力したように俯く。
「だったらその道に進めばいいじゃない。指揮者だって同じ音楽の道でしょ?ピアノだってあんなに凄いのに、諦めなくたって…」
「黙れ」
「………え」
そこまであたしが言いかけると、総也のまとっていた雰囲気ががらりと変わった。
総也は俯いたまま、前髪をたらしていて、その表情はここからではうかがえない。
だけど見なくても、聞かなくてもすぐにわかった。
総也が………
………かなり、怒ってる。
「総、也……」
「わかったような口きくんじゃねぇよ。お前なんかに何がわかんの?」
顔を上げた総也の瞳は、鋭くあたしを捕えてる。
今までに見たことがないくらい、その目は怒りをあらわしていた。
