あれ…?
「ねぇ、総也。総也が手に持ってるのって…」
写真を暫く見つめていると、お父さんの前でピースをしている小さな総也の右手にとあるものを発見した。
「俺の親父な。指揮者なんだ」
「指揮者?」
「もちろん、ピアノとかバイオリンとかも弾けるけどさ。本職は指揮者なんだよ」
総也のお父さんのお仕事が、指揮者…?
でもそれが一体、総也の将来とどういう……。
「……あっ」
そこまで考えたところであたしは気付いた。
そうか。そういうことか。
「総也は……」
「うん」
写真の中の…、おそらくお父さんのものであろう“指揮棒”を持つ総也の表情は、太陽のように明るい。
この子は、うん。きっとそうに違いない。
お父さんの背中を追いかけて育った子、だったんだ。
「ピアニストじゃなくて、指揮者になりたいんだね」
