わぁ……。


これまた上品で可憐な白いグランドピアノを前に大きく身体を揺らしながら演奏する背中。




ピアノの振動とその迫力が心臓に直接響いてくるようだ。



チャラ男の総也とピアノなんてとても似つかないと思っていたけど、全然、そんなことない。


その姿は、演奏者としてとても様になってる。




総也の紡ぐ強く、繊細な旋律が風にのって耳の奥をスッと抜けていく。


彼のピアニストとしてのレベルの高さを象徴するような演奏だった。





「凄い…」



つい、圧倒されて自分が無意識のうちに呟いていることさえ、気が付かなかったくらいだ。





そうやって、知らず知らずのうちに聴き入ってしまっていると、ふいにその演奏が止まった。



え?と思って目を開くと、びっくりした表情を浮かべた総也がこっちを振り返っている。





「さ、さゆっ!?」




そして慌ててピアノから遠ざかり、あたしと彼の音を阻んでいた扉を開けた。