スリッパを用意してもらい、それに履き替える。


玄関は2階まで筒抜けになっていた。




オシャレな照明が天井でくるくると回っている。




「2人とも防音室で楽器の練習をしております」



松宮さんが2階へ続くらせん階段を指して言った。




「紗雪。お前は2階にあがらせてもらって、2人の様子を見てこい。休憩がてら話でもしてやるといい」


「はい。あの、先輩は…?」


「俺は松宮さんに話がある」




梶先輩はいつの間に用意していたのか、包装されたお菓子を持って松宮さんと奥の客間へ向かってしまった。




勝手に上がっていいんだよね…?



あたしは松宮さんに言われたらせん階段をのぼって2階へ上がった。





あっ…。ピアノの音がきこえてくる。



防音室って言ってたから、ここでは少ししかきこえないけど、耳にしたことのあるクラシック音楽が段々と近付いてくるのがわかった。




あの部屋か。


【ピアノ室】シンプルな白いプレートにそう書いてある。



ガラスの扉からは中の様子がはっきりと窺えた。