「何でも、ないです」 「そうか」 あたしが先輩からそれをそらして答えると、先輩は諦めたように目線をもとの位置に正した。 車の中。 黒い、車の中。 数名の男の人と、抵抗しきれなかったあたし。 「………」 「そろそろ着くぞ」 「え…?」 車に揺られること20分程度。 先輩が視界を閉ざしたままそう、言った。 窓の外に目をやる。 “翔陽学院前” そんな名前の付いたバス停がたっている。 「あ…」 その先には、歴史を感じさせる、大きな学校があった。