「はぁ…」



稟があからさまに大きなため息を吐いて、やれやれと言った様子で視線をはずす。




「総也は高校卒業後は音大に入ることを条件に律明を受けたんだから、こうなるのは至って自然な道理なんだけど。約束通り在学中もピアノを触らなかった総也が悪い」




自分の実のお兄さんなのに、稟はやけにあっさりしてる。



確かに、確かに稟の言ってることは最もかもしれないけど…。


あたしは「でも」抑えきれずに口を挟んだ。




「稟だって音楽の道に進む気はないんでしょ…?」



前に光に聞いた話を思い出して稟に問いかける。


稟は「別に」心底鬱陶しそうに頭を掻いた。




「別に俺は何でもいい。そもそもあんたに関係ない」


「稟。そういう言い方はよくない」



オミ先輩が稟に向かってあたしをかばうように言った。




確かにあたしは、皆よりも総也や稟たちとも付き合いはずっと短いし、まだ全然役員の皆のこともわからないことばかりだけど…。




「総也は今家で真面目に練習してる。総也のことを思うなら、邪魔はしない方がいいと思うけど」



稟は突き放すような瞳をしてあたしたちに向けて言い放った。