「総也と稟のご両親はね、紗雪」




無意識のうちに頭を下げていると、隣の席に座る光が頬杖をついて話し出した。




「凄く有名な、音楽家の夫婦なんだよねぇ」


「そうなの?」


「だから総也も稟も当然、幼い頃から音楽の勉強をさせられてて、総也はピアノ、稟はバイオリンを専攻して習わされてたらしいの」




総也がピアノ!?


稟がバイオリン!?




あの2人、楽器を弾けるの…?


百歩譲って稟はまだわかるけど、総也の場合、あの容貌じゃ考えられないかも…。




「2人ともかなり上手いんだよ。流石はあの両親の血を引いてるって感じで。コンクールに出ても必ず入賞するぐらいのレベル。当然、ご両親はプロを目指させてるんだけど…」



「だけど…?」



「総也も稟もねぇ、音楽家になりたいとは思ってないんだよねぇ。ご両親は有名な音大に進学することを推してるらしいんだけど、総也はかなり前からそれをずっと拒んでて」




総也と稟が、音楽家…。


想像できない。何だか音楽なんて世界、あたしとは全く別次元の話みたいだ。