その人は何も言わずにあたしの隣を通り越すと、本を手に持ったまま図書室の扉へ向かった。 あたしは静かにその姿を目で追う。 ガラララ…。 ~♪♪♪ 彼が扉を引いた瞬間、彼のポケットから機械的な音楽が響いた。 彼の携帯に電話があったらしい。 男子生徒は立ち止まり、扉を開きかけた状態のまま、携帯を耳元へ持って行った。 「…はい。うん。図書室だけど。は…?編入生?俺が知るわけないでしょ」 え…?編入生?今そう言った…? あたしは耳を疑って彼の背中を注視した。