そして昇降口まで来た頃。 「さ、紗雪…」 「……え?」 まさかまだ残っているとは思わなかった。 靴箱の先であたしを待っていた、1人の女子生徒。 …の、恰好をした男子生徒。 「光…。何で…」 「ケータイ…返そうと思って…」 「あぁ……。ありがと…」 あたしは光が力なく差し出すケータイを素早く受け取ってカバンに戻した。 「じゃ、じゃあね…」 「あ、さゆ……」 「ごめん。急ぐから…」 あたしは何を話せばいいのかわからなくなって、急いで昇降口から出て行った。