ギィイイィイイ――
と、掠れるようなそれらしい音を立てて、昇降口のドアを開いた。
ろうそくが一定間隔で灯されたのみの薄暗い廊下に、その音は響く。
矢印が描かれた看板が、昇降口近くの上り階段へと向けられていた。
ここを上がれって意味か。
「マジで怖くねぇんだな」
「怖いですよ、普通に。だけどそれ以上に期待の方が大きいって感じかなぁ…」
「女としてどうなのそれ」
梶先輩が頭までかぶっていたフードを下ろした。
「そういわれると答えられないんですけど…。いいんですよ、別に。あたしは今後も男の人と必要以上に仲良くする気はないし…」
「お前がそこまで男嫌いってのも、何か原因があるんじゃねぇのか」
「……それはもちろん、ありますけど」
足取りは矢印の方向へ向かっていく。
階段を上がるあたしたちの足音だけが辺りにこだました。
