「え?」 「………」 聞き間違いかと思い、もう一度聞き返すけど、予想通り返答はない。 「あの、よければまだ飴あるから…」 「どうぞお構いなく」 ポケットから出しかけた別の飴は、役立つことなく終わった。 稟はそれから、完全に本の世界へ飛んで行ってしまったらしく、あたしの問いかけにも呟きにも、終始無言を貫いた。