それから暫く歩いていると、海岸から少し離れたところに、バスで来る途中見かけた赤い自動販売機を発見した。




意外と遠かったな。



あたしは自動販売機にお金を投入して、商品を選ぶ。




「無糖、無糖、無糖ー……」



数多く揃う珈琲の中から、無糖のブラックを探していると、1番右側に2種類のそれを見つけた。




よく知られているメーカーのものと、あまり見たことのないメーカーのものだった。



どっちがいいかな。やっぱり普通に考えて有名な方がいいか。




あたしはそう考えて、有名なメーカーの珈琲を選択しようとした。








「梶先輩は、その無名な方の珈琲しか飲まない」



「……え?」





ボタンを押す直前、背中から聞いたことのある声がしてあたしが振り返ると、


そこにはさっき校正会のテントを出て行ってしまった稟が睨むようにあたしを見据えて立っていた。