何でだろう。 なぜ、藤井くんは騙されてくれないのだろう。 「本当は、見たんだ」 黙ってしまったあたしをよそに、藤井くんが話し出した。 それは、思いも寄らない話しだった。 「男の人と話しているのを見たんだ。 手を掴まれて逃げたそうだったから、助けようと思ったんだけど……。 そのうち、逃げるように朝井さんが走り去って行った。 それから、調子が悪くなって、仕事でミス連発。 だから、あの男が関係しているのかって……」 「やめてっ!! やめてよ……」