店の前であれこれ考えて、立ち止まってしまっている。
入って行く客、出て来る客に不思議そうに見られている。
それでも、そこから動かない。
イヤ、動けなかった。
「なんで……
何で、あたしなの?」
独り言のように呟く。
考えがまとまらなくて、気付いたら声に出していた。
「一目惚れかなぁ。
あ、もちろん関わっていって性格も知った上で、言っているよ」
それに対して、藤井くんはきちんと答えてくれた。
「あたし、優しくなんてしていない」
「優しさなんて求めていないよ。
それに、俺がちゃんとしていないから怒ってばっかでしょ?
仕事に一生懸命でいいじゃん」


