「あんた有名だから、すぐ噂流れてくる」
名前を呼びたくはなかった。
その甘ったるい声で、呼ばれたくもなかった。
負けたと思い知らされる気がしたから。
イヤ、そう思う時点で負けている気もする。
そもそも、勇人くんはこの人を選んだ。
その時から、すでに負けているんだ。
「有名かぁ。
そっか、私もまだまだ捨てたもんじゃないねぇ」
フフフと笑いながら言った。
悪女全開の表情だ。
ただ、何かを勘違いしている。
本人は有名の理由が、美人だからだと思っている。
それもあるかもしれないけど、実際は、悪女の方が有名だ。


