「――……あ、ごめん桃果」
気づいた香苗は慌てて口を押さえた
「いいよいいよ」
どうせー…
「聞き耳立てられてると思うから」
ガタタッ
あたしの言葉と同時に、教室の扉が大きな音を立てた
「――ほら、ね」
「あはは、本当だ」
いまどきそんなの、コントですか
「…で?どういうこと?」
問い詰められたあたしは、王子が隣に引っ越してきたこと、誰にも言うなと言われたことを香苗に話した
「ええぇー!!いいなぁ桃果ぁぁ!」
あたしの話を聞き終えると、香苗があたしに抱きついてきた
「ちょ、っえ!?香苗?」
「お近づきになるチャンスじゃんっ」
「お近づきになんか、」
「嫌いなんだっけ。もったいなーい」
香苗の言葉があたしのなかを流れていく
いつ、そうなったのか
あたしは思い出せないでいた

