「気まぐれならやめて」

「気まぐれ?」

「ちょっと昔を思い出しただけでこんな風にするのはやめて」

 止めどなく流れる真紀の涙を見て、辛い思いをした別の人が誰だったのかようやくわかった。

「許してくれ」

 真紀をそっと抱きしめると、お風呂上りのいい匂いがする。

「本心じゃないなら、やめて」

「本心かどうかわからない」

「じゃあ、離して」

 真紀が俺の腕を離そうとする。

「チャンスをくれ」

「やめて」

「指輪を外させない男になるから」

「……」

「これは本心だ」

「……」

「もう一度、チャンスをくれ」

 真紀の腕が離れた。

「もう一度……」