「どこにあるんだ。俺が持ってくる」

「わかったわ。今持ってくる」

 そう言うと居間を出て二階へ上がっていった。森山が言った辛い思いをしたのは別の人という言葉を思い出した。

 真紀、お前は気付いていたのか?

 居間のドアが開き、真紀が入ってきた。その手には二つの箱がある。

 プロポーズしたときの指輪とあとから買った俺の指輪だ。

「貸してくれ」

 俺が手を伸ばすと真紀はそっと手に乗せた。箱を開けると、少し傷ついているが小さな輝きを持った指輪がある。二つの箱をテーブルに置き、指輪を手に取り、真紀の左手を握った。

「なに?」

 俺の突然の行動に真紀は眉間に皺を寄せた。それでも俺は何も言わず、薬指に指輪をはめた。