健康探求が興じて始まったこの高麗人参の栽培だが、手間を掛けて育てているうちに、今ではこの鉢植えが私の宝物と言える存在になっている。
「ヘエ~高麗人参ね……鉢に成ってるの初めて見たよ♪
あとどのくらいで収穫出来るんだ、これ?」
「まだまだかかるよ。あと二~三年はかかる!」
「それじゃ、買った方が楽なんじゃないのか?」
「そういう問題じゃ無い、気持ちの問題だよ。
それより、いつまでベランダにいるんだ。部屋が寒くなるだろ!」
ガラス戸を開けっ放しで煙草を吸っている前田に、私は早く部屋へと戻るよう促した。
「そうだな。まだまだ外は寒いや」
そう呟いて煙草の吸いがらを自分の携帯灰皿に入れた前田は、背中を丸めて部屋へと戻ってきた。
とその時、不覚にも私はクシャミをしてしまった。
「ヘックショイ!」
「おや?もしかして風邪か?健康優良児のタケヤス君♪」
前田がからかうように言うのを、私は全力で否定した。
「馬鹿を言うな!風邪なんて、ここ何年もひいた事が無い!」
「そうだよな♪これだけ健康に気を使って風邪ひいたなんて、いい笑い者だからな♪」
まったくその通りだ!
ここまで健康に気を配って、何か病気にでもかかったら、今までの苦労はいったい何だったのかという事になってしまうではないか。
.



