「それで、そんなに健康になっていったいどうしようっていうんだよ?」
目の前にいるのは、私の高校時代からの友人『前田 達郎』
煙草は吸うし、肥満だし、不健康極まりない奴だ。
「どうするって、健康な体でいる事は素晴らしい事だろうが」
「そりゃあさ、病気よりは健康な方がいいんだろうが……こう、楽しみとか…夢とか希望とかさ……」
「楽しみならあるさ!
安定した血糖値と血圧のデータを眺めながら養命酒を……」
「ハハハ……そりゃいいや♪」
前田は私の返答に笑いながら、ポケットから煙草を取り出す。
「おい、前田!」
「分かってるよ。この部屋は禁煙だろ?ちゃんとベランダで吸うよ」
前田はそう言って、部屋のガラス戸を開けてベランダへと出た。
すると、
「おい、これ何だ?」
ベランダに置いてある、少し大きめの鉢植えを指差しながら、前田は怪訝そうな表情で私を見ている。
「お前、まさかこれ……」
前田が何を言おうとしていたのかすぐにピンときた私は、彼が全てを言い終わる前に即座に否定した。
「馬鹿!誰が大麻なんて栽培するか!あんな不健康極まりない物!」
「じゃあ、何だこれ?
お前にガーデニングの趣味があるとは思えないが?」
「それは、高麗人参だよ!」
「高麗人参って……あの、漢方薬とかに使っているアレか?」
「そうだ。それ、育てるの結構大変なんだぞ!」
高麗人参の栽培は、とても手間が掛かるのだ。
土作りに三年、日照の加減、水の加減、それらに細心の注意を払いながら収穫までには四年から六年の歳月を必要とする。
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