恋するキミの、愛しい秘めごと



待ち合わせ場所は、車が入りやすいマンション近くの公園の前。

マンションを出て角を曲がった、徒歩2分のその場所に、白いスポーツカーが停まっていた。


あれかな……?

車にそんなに詳しくない私にはよくわからないけれど、天井の黒い革のような部分が開くのであろうアレが“オープンカー”と言われるものだということだけは分かった。


柔らかい、フワフワしたイメージの榊原さんっぽくない車にドキドキしながら近寄って行くと、運転席だと思われる右側のドアが開いた。

右って事は国産車?

国産車にもオープンカーってあるんだ。


「こんにちは」

「こんにちは。すみません、こんな所まで来ていただいて」

車から出て来たのは、見慣れない私服姿の榊原さん。

グレーのポンチジップパーカーに、ホワイトデニム。グルグル巻きにされたマフラーが可愛すぎる。


そのツボすぎる服装にキュンとしていると、「私服、可愛いね」なんて言いながらニッコリ笑うから、心臓をやられて倒れるんじゃないかと本気で自分の身を案じた。


「さて、どこに向えばいい?」

車に乗り込んでナビを起動させた榊原さんが、私の顔を覗き込む。


――今日まで秘密にしていた、デートの場所。

「みなとみらいに行きたいんですけど」

「みなとみらい?」

どうしても榊原さんと行ってみたかったんだ。


「はい。えっと……観覧車に乗りたくて」


昔誰かが“初デートにディズニーランドとか、長時間並ぶものは行っちゃダメ”なんて言っていたのをふと思い出してドキドキしながら返事を待っていると、私を見つめる茶色い瞳がわずかに細められて。


「じゃー観覧車は夜にして、それまでコスモワールドで遊ばない?」

「遊園地! 大好きです!」

「ジェットコースターとか久々に乗りたいなー」

まるで子供みたいに嬉しそうにそんなことを言うから、思わず笑ってしまった。

だけど、何故かそのまま凝視されて……。


「……どうかしましたか?」

「いや……。ありがとう」

突然のお礼にキョトンとする私に、榊原さんは少し困ったような笑みを浮かべて車を発進させた。