「ちなみに今回も“日和《ひより》には手を出すなよ!!”って、あり得ない念を押されましたが」

「伯父さんったら、私のこと溺愛してるから」

「こっちは、こんなクソガキに手を出すと思われてる時点で屈辱なんですけど」

「はぁ? クソガキじゃないけど。たった4つしか違わないし」

「4つ違えば充分だろ」


南場 日和《なんば ひより》。

この、のどかーな北海道の牧場を連想してしまいそうな名前が、私の名前だ。


「ヒヨコがピーピーうるせーなぁ、おい」

「え、なに? 子供?」

こんなやり取りを、子供の頃から続けている私たち。

とは言え、25年間ずっとカンちゃんの傍で生きてきたワケではなくて、カンちゃんの大学進学――カンちゃんが18歳で、私が14歳の時――を機に、それまで過ごしてきた日々が嘘だったかのようにパタリと会う機会がなくなった。


だけど、それから約8年経ったある日。

私たちは、思わぬ形で再会することになった――……。