「――ん?」
“ポン”というメールを受信したタブレットの音で目を覚ましたのは、空が薄っすら明るみ始めた頃。
寝不足で頭に走る鈍い痛みに一瞬顔を顰め、
「……」
自分の腕の中でスヤスヤ眠る日和を見つけて、思わず微笑んだ。
どうして日和がいるだけで、こんなに優しい気持ちになれるのだろう。
そっとその髪に唇を落とすと、日和を起こさないように頭の下から腕を抜き、サイドボードのタブレットを手に取った。
「……ヤロウ」
届いていたメールの差出人は、冴子。
『南場さんは、無事そっちに着いた? ちゃんと逢えたかしらー?』――なんて、白々しい言葉から始まったそのメールを、一瞬ゴミ箱に捨ててやろうかとも思ったけれど。
読み進めた先に書かれていた真実に、心がひどく震えて……本気で泣きそうになった。
『あなたと離れていた2年間で、彼女は何をしていたと思う?』
――俺の知らない、日和の空白の時間。
『あなたがH・F・Rに残して行った仕事を全部引き継いで、立ち上げまで終わらせて行ったのよ』
勝手に自分の器の小ささに幻滅して、榊原さんの想いの深さを思い知って。
独りよがりな行動で、日和を傷付けたのは俺だったのに……。
『あとね、南場さん、シュンが立ち上げた会社に通って、表に出られなくなったシュンの変わりに窓口役をしてくれてたの』
「……」
『それって、誰の為にした事だと思う?』
君はどこまでも優しくて、そしてとても強かった。
『ちなみに、シュンと南場さんは一度も寄りを戻してないから誤解しないように。――榊原 冴子より』
そう締めくくられていたメールを読んで、声を殺して泣きながら、思わず笑ってしまった。
相変わらずスヤスヤと寝息を立てて眠る日和をギュッと抱きしめると、細い腕が背中に回される。
「……日和?」
声をかけても返事はなくて、無意識に俺の胸に顔を埋める彼女が愛しくてたまらない。
「好きだよ」
小さく囁いて、そっと瞳を閉じる。

