恋するキミの、愛しい秘めごと



「あの、あんまり見られると恥ずかしいんだけど」

じっとりと汗をかき、余韻が残る体を投げ出す日和が、隣で肘を付いてその姿を眺める俺に困ったような笑みを浮かべる。

今更なのに、モジモジしながら毛布を手繰り寄せるその様子が可愛くて、頭の下に滑り込ませた腕に力を入れて優しく抱き寄せた。


「カンちゃん、私……」

さっきまでの熱が嘘のように冷たくなった体。

それを温めるように抱きしめながら、胸元の日和に視線を落とす。

「どうした?」

「こっちに引っ越して来ても平気?」

「え、来ないつもりだったの?」

からかうようにそう言うと、「だって」と口を尖らせる。


――わかってる。

俺がそれだけ日和を不安にさせていたという事だよな。


「あのよくわからないニューギニアの仮面とかはちょっと置いて来てもらって、後は全部持っておいで」

笑いながらそう言うと、日和は少し考え込んだ後、「わかった」と渋々頷く。


そんなにあの仮面が気に入っていたのかと、多少驚きつつも。

「それとさ、」

少し温かくなった彼女の体をそっと離して、取った手の薬指にキスを落とした。


「何号?」

「え?」

「指輪。明日一緒に買いに行こう」

「……いいの? てゆーか、仕事は?」

「明日からバカンスを取ることとする」

「えぇっ!?」

どうせやる事もないしと、仕事をしに行くつもりだったけれど、事情も変わった事だし。


「あと、バタバタさせて悪いけど、明後日の朝イチの飛行機で日本に行こう」

「日本に? 何で?」

“何で”って、そんなの決まってるだろ。


「籍入れてこよう?」

「……っ」

俺はもう、日和以外は目に入らないし、きっと日和もそうだろう?


「あ、もし“この日がいい”とかがあれば待つけど」

驚いて開きかけのまま止まった唇に、チュッとキスをすると、目が覚めたようにハッとした日和が凄い勢いで頭を振るから思いっきり笑ってしまった。


「そしたら、この家で一緒に暮らせるんだね」

ネコが戯れるみたいに、ゴロゴロと胸に頬ずりをする彼女の髪は柔らかくて、やっぱりいつものジャスミンの香りがする。


「それにしても、本当に綺麗」

キラキラした瞳で天窓越しの星を見上げる日和。

この家唯一の2階の部屋にあたる、小さな天文台を見せたら、きっともっと喜ぶだろうな。


明日には、空に向かって手を伸ばす日和のその指に指輪がキラキラ光るのかと思うと嬉しくて、男のくせに何だか泣きそうになった。


「あ、そう言えば、ずっと気になっている事があったの」

「え?」

少し恥ずかしい妄想に浸っていた俺は、神妙な表情を浮かべる日和の突然の言葉にドキリとする。

いや、別に後ろめたい事は何もないんだけど……。


「カンちゃん」

「お、おう」

「あのさ……」

ゴクリ。

「あのマンションで言おうとした、4つ目の約束って何だったの?」

「――は?」

呆気に取られる俺に詰め寄って、ずっと気になっていたから教えろと――その瞳をクリクリさせながら顔を覗き込んだ。


「えーっと、何だっけ……」

「……」

「いや、ホントに」

すっとぼける俺を凄い目力で睨み上げた日和は、「秘密は作らないって言ったくせに!!」と不貞腐れてそっぽを向く。


「日和」

「……」

「ヒヨ」

「……」

「ヒヨコ」

「はぁ!?」

眉根を寄せて振り返った日和は凄い形相で、それなのに心の底から幸せだと思ってしまう。


「可愛い」

「ちょ、ちょっと……カンちゃん」

「うん」

「やだ……っ」

身をよじる日和の体にたくさんのキスを落とし、何度も何度も抱き合って、2人一緒に眠りについた。