恋するキミの、愛しい秘めごと



博物館を出てタクシーに乗り込み、辿り着いたのは俺の行きつけの飲み屋だった。

いや、正確に言うと「俺達の行きつけ」か。


「……」

まぁ、そこに着いた時点で予想は出来たのだけれど……。


「おや? 邪魔者がいるぞ」

「……そっくりそのままお返ししますけど」

日和に続いて、ジャズが生演奏されている店内のいつもの席につくと、その人は一瞬物凄く驚いた顔をして。

だけど、すぐにいつもの悪戯ジジイの顔に戻って楽しそうに笑う。


「つーか高幡先生、人の嫁さんをそそのかすのやめて下さいよ」

「自分がグズグズしていたのを棚に上げて、その言い草はどうだろう。なぁ、ジャンヌ君」

「ホントですよねぇー」

「……」

いや、マジでシャレになんねーし、俺ひとりだけ笑えねーし。


まったく、いつの間にこんなに仲良くなったのか。

誤魔化すように「へっ!」と悪態をつく俺を、2人は若干ヤキモチを妬きそうになるくらい仲良くからかい続けた。


そして、ひとしきり人で遊んで楽しんだ2人がやっと酒を飲み始めた時、

「だけど、本当に良かった」

高幡先生がポロリと口にした言葉に、胸がグッと苦しくなった。


この人は、もうずっと昔から俺のことを知っていて、俺の日和に対する想いも知っていた。

きっと優しいこの人は、まるで自分の子供か孫を見ている気持ちで俺達を見守っていたのだろう。


そんな高幡先生に「ありがとうございます」と、色んな気持ちを込めて頭を下げた。

隣の日和も同じようにペコリと頭を下げると、そんな俺達を見て、高幡先生は「まるで結婚式の挨拶みたいだな」と微笑んだ。


俺は、自分には祖父が3人いると思っている。

母方の祖父と、父方の俺と日和の祖父――それと、目の前のこの人だ。


俺にとっても、きっと日和にとっても、この時々ふざけたじい様は、大切な存在なんだ。