「――っ」
部屋の中にゆっくりと足を踏み入れ、周りを見回しながら息を呑んだ。
どうして……忘れていたのだろう。
部屋中に散りばめられた、宇宙の写真。
それに、夜の地球を写した衛星写真。
あぁ、そうか。
これだったんだ……。
榊原さんの部屋であの“地球”を見た瞬間に感じた、懐かしさの理由。
それに今頃気が付いた。
部屋中に貼られた写真や本の切り抜きは、紛れもなくカンちゃんが貼った物。
そして……私が貼った物。
いつも一緒にいたカンちゃんのこの部屋に、私が最後に入ったのは何歳の頃だっただろう。
どちらかと言えば、みんなで私の家に集まることが多かったから……。
カンちゃんが中学生で、私が小学生くらい?
それとも、もっと前の事だった?
“宇宙飛行士になる”と聞いたのは、確かにこの部屋でだった。
それに対して、私は何て言った……?
額に手を当て、もうそこまで出かかっている答えを必死になって引きずり出す。
あのベッドの上に寝転んで、「宇宙飛行士って頭も良くないとダメらしいよ?」って笑って……。
それにカンちゃんが「ヒヨコよりは賢いんですけど」って、顔を顰めて返事をした。
「それで……」
それで――。
意識をしないと、呼吸をするのも忘れるくらい必死に――ゴチャゴチャになった頭で、部屋の中に散りばめられたヒントを探す。
そこでふと、机の上に数枚の白い紙と、先がフック状に曲がった小さな金具が置かれている事に気が付いた。
「これは?」
それを手に取り、用紙に視線を落とす。
「――“ヒヨコ星”の設計図?」
小さな“ヒヨコ星”。
“The weather planet”と名付けたくせに、カンちゃんはいつもその星を“ヒヨコ星”と呼んでいた。
そんな高幡さんの話を思い出しながら、見ても到底分かりそうにない設計図に目を通す。
何かヒントはないのだろうか。
小さなものでもいいから……。
数枚あるその紙を捲り、一通り目を通す。
――そして。
「……これは、何?」
他の変色した紙よりも、明らかに新しい6枚目の紙に書かれていた、私の知らないカラクリ。
震える手で“ヒヨコ星”を取り出し、電源アダプターを差し込んで、机の上の銀色の金具を見つめた。
設計図に書かれた、小さな鍵穴。
そこに金具を差し込むと、“ヒヨコ星”の底がパカッと外れる。
現れたのは、丸い小さなレンズだった。
これは、もしかして……。
はやる気持ちを必死に抑え、窓辺に駆け寄ってカーテンを閉める。
暗くなった部屋で、再び“ヒヨコ星”を抱え、スイッチのボタンを順々に押して行くと――……。
「……っ」
音もなく、涙が頬を滑り落ちていく。
ここに来て、やっと思い出すなんて。
「『終わりにする』て言ったのに……」
それならどうして、これを私に知らせないまま離れて行ったの?
どうして、「忘れてんじゃねーよ」って、いつもみたいに言ってくれなかったの?

