「どーぞ」

館内を歩くこと数分。

ドアを開けてダウンライトを点けたカンちゃんに促されて、その部屋に入った。


「なに……これ」

目の前に現れたのは、幾つかのボコボコとした球体がくっついたような形の機械。

それ以外置かれていない、円形の大きな部屋はガランとしていて、見上げる天井は高く半球型をしている。


不思議なその空間をキョロキョロと見回す私の隣で、カンちゃんは「肩凝った」なんて言いながらネクタイを緩め、着ていたタキーシードのジャケットをポイッと床に脱ぎ捨ててしまった。


「……」

似合っていたのに、勿体ない。


そんな私の残念心に気付きもしないカンちゃんは、「ちょっと待ってて」と、きっとボブに貰ったのだろうプラスチックコップにシャンパンを注ぎ、私に手渡して。

頭をポンポンと撫でると、機械の傍に座り込んで何か作業を始めた。


えっと、私はどうしたらいいのでしょうか……。


履きなれない靴を履いていたせいで、足が少し痛くて、どこかに座ろうかと周りを見回すけれど椅子なんてない。


丁度よく床にはカーペットが敷かれていたから、カンちゃんと同じようにそのままそこに腰を下ろし、子供みたいに足を投げ出した。


「……」

足先をプラプラさせながら、機械の傍でカチャカチャと音を立てているカンちゃんの背中を見つめる。


きっとここは、カンちゃんの仕事場なんだよね。


たった、それだけ。

今のカンちゃんの暮らしを、ほんの少し知ることが出来ただけで、嬉しくて胸がキュンとしてしまうなんて。


告白を中断されたのはアレだけど、それでもこうしてここに連れて来てもらえたのだから、さっきの空気の読めないっぷりは許してあげよう。


思わず緩む口元を隠すように、両手を頬に添える。


「――よし。完成」


そんな私の目の前で何かを完成させたらしいカンちゃんが、ゆっくりと立ち上がり、

「……」

振り返った先にいた私を見て、目をパチパチと瞬かせた。


「え? 何?」

どうしてそんな表情を浮かべているの分からずに首を傾げると、プッと吹き出されて。


「その子供みたいな座り方、何とかしろ」


いやいやいやいや。

子供はそっちでしょう?


さっきまで「プラモデル作りでもしてるんですか?」って感じの顔をしていたくせに。


思わず顔を顰めた私を見てカンちゃんはまた笑って、そのまま隣まで歩み寄ると、子供呼ばわりした私と同じように、その場に胡坐をかいて座った。