まるで引きずるように、腕を掴んだまま私を会場の外に連れ出したカンちゃん。
その掌がすごく熱く感じるのは、きっと自分の体が冷たくなっているからだ。
「日和」
カンちゃん、私……。
人のいない小さな会議室に私を連れ込んだカンちゃんが、屈んで私の瞳を真っ直ぐに見据える。
だけどなかなか言葉を発することが出来なくて。
「どういう……こと?」
やっとの思いで絞り出した声は、自分でも驚くほどに震えていた。
だって、意味がわからない。
どうして私の企画を、榊原さんが……。
「日和、榊原さんと一緒に仕事したことあったか?」
「……っ」
カンちゃんに、感情の見えない低い声でそう尋ねられ体がガタガタと震え出す。
あの日――榊原さんに初めて抱かれた夜。
“仕事、終わりそうで良かったね”
私のパソコンの中を覗いていないはずの榊原さんは、確かにそう言った。
そんなはずない。
そんな事、あるはずがない。
「日和、時間がない」
――だけど、それ以外考えられない。
「カンちゃ――」
「うん」
「榊原さん……なの?」
一体何を言っているのか。
口をついて出る言葉も、頭の中と同じようにグチャグチャだ。
いつの間にか宙を彷徨っていた視線をカンちゃんに向けると、その眉がグッと寄せられて、
「今のところ、他の漏れ口が見つからない」
怒りを押し殺したような静かな声に、自分の体から血の気が引いて行くのが分かった。
どうして。
どうして、どうして。
どうして――。
「私……っ」
「……」
「すみません、私――」
あれだけ企画書の管理を徹底するように言われていたのに、私は……。
だけどカンちゃんは、私の言葉に小さく首を振って言ったんだ。
「謝るのは後にして、今はとにかく代替案を考えろ」
「でも、」
先方に資料を渡して、プレゼンが始まってしまった今、もう打つ手はないはずだ。
「クライアントの方は俺が何とかするから、日和はとにかく考えろ」
「分かったな?」と念を押されたものの、まるで麻酔がかかったみたいに動かない頭では考えられるはずがない。

