「……ねえ…。」
「…………。」
「……ねえ、ちょっと。」
「………………。」
「…感じ悪いよ…?無視?登坂ゆうじーん」
そこまで言うと。
彼はようやくくるり、とこちらを見た。
「『ねえ』とか『ちょっと』じゃ誰に言ってんのかわかりません。」
そして何故……
不機嫌?!
「余計なお世話だったみたいね。次、教室移動なんだけど…もういい」
「……。フルネームで呼ばれるの初めて。他人行儀だね」
「……………。」
……は?不機嫌な理由が……
ソレ?
「…心配して損した。じゃーね。」
アホらしい。
訳がわからない。
こんな奴さっさと置いて先に行けば良かったわ。
「……『心配』…?」
「……!」
背中を向けた私の腕を…。
彼は座ったまま、しっかりと握っていた。
「……心配って…、何で?」
ひとつも笑わずに、じっと真っ直ぐに…
私を見ている。
「…………。」
何でってそりゃあ……。
アンタの頭の上……。
そんな物を掲げて。
気にならない訳ないでしょう?
だから、余計なお世話かもしれないけど。
放っては…
おけないのだ。
「アンタさ…、体調悪いの?」
「………。……は?」
「もしくは、気持ち悪いとか頭打ったとか…そういった類のことは?」
「……?この前バスケのプレー中に頭打ったあの時以来…一切ないけど。」
「…本当に?」
「…うん。」
「…絶対?」
「うん。」
そこで私はようやく……
安堵の息を吐く。
「…なら、良かった。」
気のせい…だったか。
「……どうりで…、朝から視線を感じると思ったら…。」
「は?」
朝から……?
いや、そりゃあ見てたかもしれないけど、それは……。
「余りにも…そっちがぼうっとしてたからだよ。」
「…………。それはそれは…。」
悠仁はイキナリ立ち上がって…、
わたしの両頬を掴むと。
それを横に、びよ~んと引き伸ばした。
「…?!イタタ…、なにすんの。」
「お節介なのは素だったんだな。無駄な時間過ごして…馬鹿じゃないの?」


