2年8組。
私のクラス。
その扉を開いた途端に…。
「七世っ、待ってましたぁ~!」
ピョンっと抱き着いてくる友人·心(シン)に…、
「櫻井~、おっせ~よ!」
わらわらと集まるクラスメイト達。
「おはよ~。なになに、朝から歓迎ムード?」
私は努めてにこやかに対処する。
「かっちゃん(数学教師)が小テストするって言うんだけど…、範囲の問題解こうにもさっっぱりわかんないっ!」
「へぇ…、抜き打ち?…で?」
「……教えてくださいッ!!」
シンをはじめ、深々と頭を下げてくる彼等を…
私は無下にしない。
ニッコリと笑って。
「厳しくいくよ~?」
……なんて、おどけてみせる。
我ながら……
完璧な身のこなし。
すっかり板についた、優等生の……演技。
「七世……。ラブ!」
「あははっ、やめて~!」
また抱き着いてくる心とイチャこいで…。
仲良しごっこを演出。
そう……、
味気ない女だなんて思わせない。
要領よく、自分で自分の味つけをしてしまえば……
こっちのもの。
人生、楽に生きた方がいい。
素直に、気持ち赴くままに・・・なーんて、私の中では全くの皆無。
例え虚像であろうと、ここぞという時に上手く取り繕ってサラリとかわして…
笑顔でやってのけて。
天を見るか地を見るのか…、
それは。自分にかかっていると……
思っていたのだ。


