どちらも……、少しだけ違う。
正確に言えば、『見かけたのは』。
「……。せつないね。」
……これが…、
私の口癖。
彼のことは……、たった今この瞬間まで名前さえ知らなかった。
いつぶりか、久しぶりに見かけたのが――…この前だった。
………それだけ。
寂しいとか、残念だとか、
そういった気持ちは…
持ち合わせてなどいない。
ただ、無念であったであろうと……
まるで他人行儀な感情のみで、この記事を眺めている。
「……どれ…、行きますか。」
櫻井七世、16歳。
今日も朝の日課、
『日記』にペンを走らせて……。
「……行ってきます!」
いつものように……
家を飛び出した。


