なんでこんな急展開に?…って思いながらも。
悠仁宅のインターホンを鳴らす私。
でも……、彼は出ない。
「………。」
鍵を開けておくって言ってたっけ……。
「……お邪魔します。」
一応そう断って…
玄関へと、足を踏み入れる。
「……靴は……ある。」
…が、返事は……ない。
一足の大きいサイズのスニーカー。乱雑に脱ぎ捨てられたソレは、おそらく…悠仁の物だ。
飾り気のない棚。
その上に、小さな木箱だけが置かれていて。
覗くとそこには…鍵が入っていた。
「…………。いるん…だよね?」
仕方なく、とりあえず靴をぬいで…隣りに並べ置いた。
ついでに、ひっくり返ったスニーカーも、直しておく。
そのまま、奥の部屋へと続く廊下を真っ直ぐ歩いて行くと……。
「………。水音…?」
途中、右手にある扉の方から……
微かに聞こえる、流水音。
シャワーの…音?
まさかの……
入浴中?!
「…………。」
まさか、素っ裸で出てきたりはしないよね……?!
「………。お邪魔します!!!」
扉に向かって大声で叫ぶと……。
「あ、櫻井?…ちょっとこっち来て!!」
……??!!
入浴……許可?ってんな訳ないし。
妄想もそこそこに、目を閉じたまま入っていく。
扉を開けたそこは、湿り気と熱気が漂う…脱衣所だった。
「カゴからタオルとって!」
「え。ああ…、ハイ。」
タオルを取って。
しばらくすると……
ガチャっと浴室のドアが開いた。
「きゃああっ!………って、……ん?」
慌てて目隠ししたその指の間から……
そうっと覗くと。
たちこめていた湯気は消え去り……。
「………。何してんの?」
出てきたのは、
ズボンの裾をたくしあげて、シャワーのヘッドをにぎる悠仁と……。
痩せっぽっちの…子猫。
「何って……、タオルで拭いても汚れとれなかったから、猫用のシャンプー買って洗ってみた。」
「……なる程……。」
緊張が……
一気にとけていく。
「………?どうした?」
「いえ。何でも。」
この人といると、どうにも調子が狂う。
「そこにドライヤーあるから、タオルで拭いて、乾かしといて。」
「ん。わかった。」
私はタオルを広げると…。
悠仁の手から、子猫を受け取った。
「軽……。」
優しくくるんで、胸に抱き抱えると……。
『ニャア』と、弱々しくも…、ひと鳴きした。


