古びた本の匂い。
鼻先に…それを感じる度に咽ぶ。
好んで読んでいるのでは…ない。
体が勝手に…拒絶するのだ。
彼女の日記のスタイルは……、私のものに、まるでそっくりだった。
むしろ、私の方が無意識に真似ていたのだろうが…。
大きな違い。
それは……、
彼女が歳を重ねた分だけ、
彼女を取り巻く友人や…、親族、恩師……。
沢山の身近な人達の死が……
書かれている。
それともうひとつ。
その時その時、感じた事を……
ちゃんと書き記していた。
読んで取れるのは、
無念。
そして……
後悔。
読みながら……、
次第に目頭が熱くなった。
何度この文字を見ただろう。
『なぜ』
『助けられなかった』
祖母は私と同じく……
人の最期を知ることができた。
それは、祖母のまた『祖母』も同じだった。
隔世遺伝…のようなものか…。
いずれにせよ、祖母は何かしらの行動を起こし……、死に直面する彼等を救おうとしていた。
救えなくても、命の期限を少しでも延ばそうと……
必死であった。
ここに挙げられた名前の人は……
すべて、亡くなっていた。
祖母が愛した祖父の名も。
ここに…記されていた。
祖母がしたことは。
少しでも、その人の人生に…
何かしらの変化を与えたのか?
その記述は……どこにもない。


