悠仁が次に私を連れていった場所は…。
そこから15分ほど歩いた、道路向かい側にある…
墓地、だった。
小さく丘になっているその場所からは…、確かに、海が…よく見える。
そうじゃない、
そうなのかな…、
そんな…薄々と…感じてたいたものと、予感と。
それから…常盤くんが教えてくれたこととが。
現実で…重なりあう。
「花も線香もないけど、七世に免じて許して。」
「……………。」
悠仁は…お墓の前にしゃがみ込むと。
静かに…手を合わせる。
「……ここに…誰が眠っているの?」
「……んー?みんな。」
「みんな、って…?」
「……大切な人、生きてて欲しかった人。…俺の母親だったり、ばあちゃんだったり――…。」
「………そう……。」
「産んでくれた親のこと…、余り知らない。俺が産まれた時に、死んじゃったから…仕方ないんだけど。」
「……………。」
「そもそも…リスクのある出産だってわかってて、悩んで…悩んで、そのくせ、周りに反対されればされるほど…産むってきかなくって。そんで結局……。ばあちゃんがさ、おしえてくれた。だから…、ばあちゃんが教えてくれたことだけが、俺が知ってる母親。ここは……、ばあちゃんの実家があった街なんだ。育ててくれたのは、ばーちゃんで…けど、そのばーちゃんも、俺が中学の時…死んだ。心労…だったんじゃないかな、俺だいぶ迷惑かけたし。」
「………………。」
「かわいそうとか、思うなよ?全然…かわいそうでも何でもないんだから。」
「悠仁、でも――…」
「まあ、肉親が一人残ってるだけでも…感謝しねーとな。」
「……誰が…、今悠仁と?」
「いや。高校に入ってから…ずっと、一人暮らし。馬の合わないじーちゃんが、一人。ヘンクツじじいだけどな。」
「……………。」
「……まあ…、そーゆーわけで。色々後悔してきたんだ。怖くも…なるんだよ、やっぱ。もしかしたら、生きていられたのかもしれない、俺が…あのときこうすれば…とかって。思い上がり…だけどな。次は…自分かも、とか、罰でも来るんじゃないかって…本気で思った時期もある。いつそうなっても…って覚悟決めて。思うように、後悔しないようにって……。ごめん。上手く言えないけど…死に急ぐような根暗なヤツなんだ。」
「……………。」
「……けど…、嫌なことばかりじゃあなかった。何だかんだ、辛い時に近くにいてくれた人も…いたし。母親が亡くなった時も、アイツが…居なくなった時も。ばーちゃんの時は…、常盤が気にかけてくれたし、今は…七世がいる。思ったより、結構…、いや、十分恵まれてると…思うんだ。けど……、迷うことがあると、どうしても…ここに来てしまう。生きてるんだから…何とかしろって、そう言われた気分になる。」
「………夏の…終わり。常盤くんが…言ってた。夏の終わりに…、悠仁がいつもここに来るって。何故…?」
「………母親の…命日だから。」
「……お母さんの……。」
「8月30日。俺の誕生日は…、あの人の命日。おめでとうって言われないように…泣きたくならないように。生きてても…いいって、許して貰うために。ここに…来るんだ。」


