悠仁と…約束をした。

抱き合ったまま、かすれた声を…絞り出すようにして。
明日も…会おう、って。



君は私に、
連れて行きたい所があると…言っていた。








私は…カレンダーを眺めながら。
今宵…眠れずにいる。




胸の鼓動が…やけに大きく脈うって。
妙な…実感が、わいて来る。


暗い空。
その…闇夜から。

何かが…押し迫って来る気がして。


穏やかでは…いられない。






そう―――…、


ナナの影は、跡形もなく消えて…無くなっていた筈だった。


何もない平穏な毎日が続くのだろうと…信じてた。









私は…ベッドから這い出して。

壁に掛かったカレンダーをひとつ…捲り上げる。


8月…。



上から下へと…日付けをなぞって。


そこで…、ある人の言葉を、思い出した。



『夏の終わり頃――…』



「夏の…終わり?」


嫌でも目に入ってくる…『30』の文字に。

背中から…ゾワリと、何かが這い上がって来るのを…感じた。




数字がよどんで見えるその訳を…、その理由を。

私は……知っている。

悠仁。私はアンタに…自分を責めるな、と。確かにそう言ったね。



だけど…

アンタと私は…違うんだ。




わかっている以上は……


ひたすらそれを背負って、生きていかなければ…いけない。








涙は…枯れない。
枯れそうも…、ない。

それでも……、

明日は笑って、君に…会いたい。









どうか……おばあちゃん。

私に戦う勇気を…下さい。



カレンダー、1ページ分。

その、残された時間で……


悠仁、君を…救う為に。