「……ちょっと、それで…終わり?」
返答は…、ない。
「常盤くん…、ごめん。」
今…、悠仁が何を考え、どうしたいのか。
「色々…教えてくれてありがとう。……でも、」
本人の口から…それを聞かずに、どうやって見守れば…
どうやって導いていくのが正解なのか。
「ちゃんと…あの人の口から、聞きたい。」
駆け引きに…動じるほど、あの人は…甘くはない。
私はそれを…知ってるはずだった。
「悠仁!」
私は、目の前の扉を…力任せに。思いっきり…開いた。
追いかけて、掴まえて、ちゃんと…話をしようと。そうやって、意気込んで…いたのに、
なのに――…、だ。
この日私は、君を追いかけることは…叶わなかった。
廊下に出た途端、足がすくんで…
その一歩を踏み出すことが出来なかったからだ。
何故なら…。
常盤くんの言葉が…、あの、一言が。
足枷のように…私を捕らえて。
判断を…鈍らせてしまった。
『死んでもいい』。
そんな…、想いを。
一体いつから…抱えていたのか。
全く知らなかった…君の一面が、あまりにも…寂しすぎて。
想像も…したことがなくて。
好きだ、という気持ちひとつで追いかけるには……
勇気が足りなかった。


