常盤くんの口から、私の知らなかった、中学時代の悠仁の姿が…語られていく。
多分、今とほとんど変わらず、人当たりのいい人気者。…けれどまだちょぴり幼くて。大分ヤンチャで。
それから――…
何処か、寂しそうな…少年の日常が、垣間見えた。
「間違ってると自分が思えば、相手が先輩であろうと…とって掛かってくようなところもあったし、先生に反抗することもあったし…。大体は、みんな思ってることを代表して行動に出たにすぎないんだけど、正義の方向性が間違ってるっていうか、度が過ぎるっていうか…。要するに、冷静に考える間もなく、思いのまま動いちゃうガキだったってだけなんだろうけど、まー、大変だったよね、なだめ役の俺も。多分…アイツの家族も。」
思うままに行動する。
それは…、今の悠仁にも通ずるものがあった。
「そーいうのだからさ、周りは味方ばっかだったし、やっぱりモテてたんだけど…。」
少年の、恋の話は…聞きたいような、聞きたくないような…複雑なところ。
「これは両想いだろ?って、周りが本人をよそに盛り上がったり、冷やかすこともあるだろ?中坊だと、多分今よかそういう傾向だったし、それが原因だとも言えるかもしれないけど…、全部、ダメんなるんだ。相手の子が悠仁に告白したとたん、一気にカンケイが冷める感じ。だから…特定の子と付き合うとか、そこに至ることはなかったと思う。まあ…、手を出す出さないに関して言えば、本人らにしかわかんないとこだから…アイツのことだし、結構当時はハチャメチャだったし、うん…、ソコは色々あったかもな。」
「……………。」
気になるけども…、思い当たるフシもある。
正直私に対しても、思わせぶりな態度があったことは…否定は出来ない。
「今のは俺の勝手な見解だから…ショック受けたらごめん。一応、謝っておく。」
「………ううん、そうだとしても…、それで何が変わるってワケじゃないから。」
過去のことにどうこうケチをつけるような必要もない。
ただ、『登坂悠仁』の今に…向き合いたいから。
全てを…受容していく。
私に出来ることは…それくらいだ。
「………そう。櫻井なら、そう返して来ると思った。」


