また、熱が上がって来たんじゃないかと…思った。
身体が、芯からじわりじわりと…熱を帯びて。それを解消させたくても、悠仁が逃してなどくれなくて。
己の羞恥心との……戦いでもあった。
「好き。……だから、顔くらい見せなさいよ。」
悠仁が……
ゆっくりと、顔を上げる。
マスクをしたその顔は…表情を読み取るには、不利なのでは、と思ったけれど。
君の瞳が――…余りにも優しく、弧を描くから。
その、瞳の中に…私だけを映していたから。
喉の奥が……きゅうっと締め付けられるような…
嬉しさばかりが、込み上げてきた。
悠仁が…笑ってる。
君も…私と同じ気持ちだったらいいのに――…。
「あっついなあ…、アンタの身体。」
「……………。誰が、そうさせたのよ。」
「………誰?」
「アンタの他に、誰がいるっていうの。」
「………俺以外に、いないんだ?」
君は穏やかな…その目付きを。
今度はイタズラっぽく、更に細めて見せた。
「七世。」
「………ん?」
「マスク…取って。」
「……………?アンタに…移し返しちゃうかもしれないから。やめとく。」
「……ん、大歓迎。返品受付中。責任もって、受けとめます。」
私は、ゆっくりと…悠仁のマスクへと、手を伸ばす。
――…と、その前に。
君の手が…ガッチリとその手を掴み止めた。
「………?なに?」
「ん。俺、基本Sだし、女の子に脱がされるのはやっぱ気が退ける。」
「……ちょっと!『脱がされる』って…。変態!人聞き悪い!だって、そっちが『取って』って―――…」
そこまで言って。
後は…言葉は続かなかった。
続けられなかった。
私の唇には……
もふっとした、何とも言えない柔らかい感触。
マスク越しに…
君の唇が。私の口元を、塞いだから…。


