ずっとそばに居てくれた…おばあちゃん。
もし、あの時――…
あの影の意味に気づいていれば。
もし、あの日――…
もっと早く、見つけられたなら。
もしかしたら、守れた命だったかもしれないのに。
以来…私は。
この、黒い影に……怯えるようになった。
見たい訳じゃない。
だけど……見えてしまう。
だからって、その解決法を見いだせる筈もなく、助けることだって…出来ない。
他人にいくら助言しようと…
信じてもらえる保証はない。
選んだ、最善の…策は。
傍観者に……なること。
最愛の祖母を亡くして、これ以上の悲しみに暮れるのは――…
これほどの絶望に駈られるのは……嫌だった。
人と深く関われば…
いずれは、何処かで別れが訪れる。
唯一の…自己防衛だった。
一線を引いて。
近づき過ぎず……
離れ過ぎず。常に周囲に目を見張って。
要領よく、
上手く…付き合う術を…身に付けて。
けれど………
それは、自分になんの利点を与えることはなかった。
ただ、虚しい…だけだった。
――…空虚な…世界。
そこに……
小さな光が灯ったのは。
僅かな希望を……与えてくれたのは。
悠仁……、
君の…存在だった。
私とは…、正反対。
周囲を明るく照らし続ける……存在。
眩しいくらいに。
目まぐるしく。
世界が……色を取り戻していくのだ。
人を……恋しいと思う気持ちは。
温かくて…、それから。とても…せつないものだった、…と。
思えば…、惹かれる要素はいくらだってあったのに。
目を逸らして、見ないように…していたのかもしれない。
皮肉なことに………
あの、影のお陰で…それに気づけたなんて――…。


