「懐かしいな……。」
きみなりくんは、絵が…とても上手だった。
優しくて…、ちょっとだけ意地悪で。
暇をもて余す私の相手をしてくれた、面倒見のいいお兄ちゃん。
そんな……感じだ。
「……あれ……?あの絵って……。」
きみなりくんと描いた絵は、当時宝物のようにして…とっていたはずだった。
それから…、しばらく続いた、手紙のやりとり。
あの、手紙だって…、きっと、何処かに――…?
退院してから、一度も会うことは…なかったけれど。
多分、あれが……
私の初恋だった。
気になると……
いてもたっても居られなくなって。
私は、引き出しやら、本棚の中を…くまなく探し回った。
「…………あった……。」
それは……、クローゼットの段ボールの中に。
沢山のアルバムに挟まれるようにして…入っていた。
「……うわ……、古…。」
ペラペラの白い紙は…
もう大分…黄ばんでいて。茶色いシミのようなものが…点々としていた。
「…………。へったくそー。」
見つけたのは……私が描いた絵。
イビツな描線。
だけど……目がキラキラしたヒーロー。
妙に頭でっかちな敵へと…ビームをしている。
「……これ、きみなりくんを描いたつもりなのかな……。」
子供って…素直だ。
彼が自分のヒーローだって、一見して…分かっちゃうような絵。
おまけに……、激闘を繰り広げてるハズのその頭上には。
もくもくとした…雲から、
七色の虹。
どこかメルヘンチックであることは…否めない。
「………ふーん…、このときの私、可愛いじゃん。」
虹の……一番上部の色は、
黄緑。
これには…さすがに、胸がむずむずして痒くなった。


