病院の診察時間まで…、私は自室のベッドに横になって。
そこから見える、鏡の中の自分と…何度か、にらめっこした。
「『いい顔してる』、か……。」
人に指摘されるまで、自分では…案外気づかないものなんだって…思った。
今は、正直…熱もあるし、意識ありありで自分を映しているのだから…そりゃあ、分からないだろう。
そもそも、鏡は…自分の外見を映すものだ。
カッコばかり付けて、身構えて…、時には取り繕って。
だから……自分の真の意味での変化なんて、見えてなどこない。
鏡の前で…顔を綻ばせる女は、願望と自己陶酔の現れ。………なんて――…
病床に伏している、こんな状況でも…
こんなに可愛げない思いを馳せちゃうんだから、
正直な鏡は…
私を、よりつまらない女として…映しているのだろう。
学校や外では見せられない、滑稽な…姿だ。
けれど……、
自分を取り繕うのには…限度があるって、知ったばかり。
気になるのは……、
君の瞳には…私がどう映っているのか。
悠仁と親しくなるまでの私と……、今の私。
何か少しでも…、変化をもたらしているのかな…。
「………悠仁…。」
壁掛け時計が…目に入る。
きっと君は。昨日までの私みたいに…待ちぼうけして。
今頃、イライラしながら…
教室へと向かっているのだろう。
連絡とりようにも、とることが…出来ない。
何度かスマホを手にとって。
悠仁に伝言を頼もうかとも…思った。
常盤くんならば、それが…出来るから。
けれど……私はそれをしなかった。
常盤くんの「利用していい」って言葉通りになることは…避けたかった。
それから、何よりも…自分のプライドを崩すことだけは…出来なかったのだ。


