私は窓際のあの席に座る悠仁を……
じっと見つめた。
「………。」
そうだ――…、
君と、知り合ったからだ。
「……悠仁!!」
気づけば私は、席を立ち上がり……
大声で叫んでいた。
「……なに?」
君はピタリと笑うのをやめて。
ゆっくりと…視線をこちらへと移した。
「………。さっきは……、ごめん!あと、ありがとう!」
けれど…これが精一杯。
クラス中の視線を集めて。
素直に気持ちをぶつけるのは相当恥ずかしくて……。
言った傍から、へなへなとまた椅子へと…座り直した。
悠仁の頭の上で……。
『アレ』がゆらゆらと揺らめく。
「…………。」
私がどんなに勇気を振り絞ろうと…。どんなに足掻いても、ナナのように消えることはないのかもしれない。
けれど私しか知らない、闇を抱えた君を。
守れるのも……
私だけだ。
「………りょーかい。」
うっすらと笑って。
悠仁はまた、目を逸らす。
「……………。」
こんな生半可な態度では、変えられない。
私自身も、
悠仁の運命も……。
「………七世!」
「……え?」
今度は君が……
私を呼ぶ。
「…今日も勉強?」
「……は?」
「放課後!」
「……。うん、そう。」
「…つまんない奴だな。」
「うるさいな。だってルールがわかんなきゃ会話が成り立たないんだもん。」
「………?え?」
「……バスケ!……勉強してみようかなって…」
「………。いい心掛けじゃん。じゃあ、体育館に来れば。見るのが手っ取り早い。」
「……。そのつもり。」
「…シンちゃんと一緒?」
「ううん。自分の意志で知りたいって思ったの。だから…他の人は関係ない。一人でも行くよ。」
「………うん。……そっか。」
ねえ、悠仁。
例えこれが…悪あがきでもいい。
もう、周りにどう思われたって構わない。
でなければ、君を守ろうだなんて……できないでしょう?
格好悪くたって。
少しでも、
君の側で……
君を守るチャンスを…。


