悠仁様……。
私にはアナタという生き物を把握しきれません。
そうこうしているうちに…
続々と、クラスメイト達が登校してきて。
「……………。」
私を見て、なぜか皆……固まる。
「……おはよう。」
挨拶はされど、視線が定まらないな、と思ったら。
「…はよ。」
私のすぐ背後から、男の声。
そこでようやっと…、この状況に気づく。
私はくるりと後ろに振り返って。
『離れてっ。』
口パクで…悠仁に訴え掛ける。
余りにも至近距離だから…見上げるその首が痛い。
『……。なに?』
彼もまた…口パクで返す。
「ちょっとっ。わかってるでしょう?」
今度は小声で……。
「…ハッキリ言えば?心証悪い。」
ひそひそ声で応戦してくるが……、
その台詞!
さっきの仕返し?
「………。無駄に近い!」
めんどくさくなった私はひと言でバッサリ。
「……………。そう?」
反応…それだけか。
「……半径1m……。」
「ソレ、めんどくさい。いいってもうどうせ公認になってるだろうし。」
「……や。それ意味わかんないし。」
「だってホラ……、みんなもうスルーして行ったぞ?」
「え。なぜ行ってしまったの。」
気づけば……
また、二人きり。
ちなみにさきほどの皆さまは…、
ちらちらとこちらをみながら、廊下の先を歩いていた。
「…………。登坂…。その、『公認』っていうのはさ…。つまりは…。」
「……ん~?」
「……どういう意味かな。」
「………。櫻井。頭いい奴ほどそういうことには疎いもんだな。自然と一緒に居れるいい理由になるし、気にするな。」
「………。そこは気にさせてよ。」
「人の噂も七十五日って言うだろ。まーみんな自然に忘れるって!いつの間か俺らが一緒にいるのが当たり前って思うんじゃん?」
ケタケタと笑う悠仁。
その眉は垂れ下がっていて……
楽しんでいるのか、本当は困っているのか、真意は読めない。
けれどその笑顔が宙に浮いて。
ふと……
真剣な顔つきになって私を見たのには……
ワケがあった。


